妙に変だな

僕はいつぞやの飲み会で、

若い女性2人と意気投合し、

酔っ払った勢いに後押しされたのか

彼女たちとバンドを

結成することを約束した。

そして、どのような経緯で

このような事態に陥ってしまったのか

全く分からないが、

僕はギターアンプを購入するため、

或る楽器店の駐車場で

彼女たちと待ち合わせをしていた。

年齢はおろか音楽の趣向すら

分からない女性と買い物に興じるのは、

とてもスリリングな経験だなと

考えいていると、金髪の女性が

僕に話しかけてきた。

ベース&ボーカルの

破々把田 比四(ぱぱぱだ ぴーよん)だ。

肩まで伸ばした綺麗な金色の直毛を

風になびかせながら、

口にくわえていた煙草を地に落とし、

まるで為政者が無辜の民を蹂躙するように

落とした煙草を無慈悲に踏みつけ、

燻っていた焰の命を見事に消し去った。

彼女ほど煙草の似合う女性を

僕は今までに見たことがない。

彼女は、ドラムメンバーの

飯飛騨 平(いいひだ ぴょん)が

来れなくなったことを僕に伝え、

僕は残念だと返した。

妙に変だな…と

一抹の疑念を胸の奥に潜ませたまま

楽器店に2人で入店した直後、

僕は自宅の布団の上で目覚めることになる。

つい先程の出来事が夢であったことを

何の違和感もなく

受け入れることができたし、

夢で良かったと心の底から思った。

妻帯者は若い女性と2人きりで

楽器店に行くべきではないのだ。

枕元には、僕が寝落ちをした後も

音楽の自動再生を続けている

スマートフォンが少し熱を持って

静かに佇んでいた。

BGM：ミニモニ。『ミニモニ。ジャンケンぴょん！』